ペン一本と、メモ帳

好きなものを好きなだけ

ゴジラS.Pを観るのがつらい

観なきゃいいじゃんと言われればそれまでなのだが。

まず前提を共有しよう。 元々怪獣モノに興味はなかった。したがってゴジラS.Pも全くノーマークだったのだが、アマプラ、U-NEXT、ネトフリが使えるようになってから、同じ環境の友人と映画をシェアする機会が増えた。

それによって必然的に共通の話題に映画が出てくることになる。 それまで観たことがなかったシン・ゴジラを観たのも、アマプラのウォッチパーティーで観よう、という話になったのがきっかけだった。ボイチャしながらツッコミ入れながらでもないと日本映画を観るのはつらい。

ネタバレや無粋なツッコミOKという低い障壁によって、観ることができるようになった映画のジャンルは大きく広がった。平成ガメラも観たし、ハリウッド版ゴジラも観た。KOMはとくに面白かった。渡辺謙ゴジラを「ゴジラ」って発音するのがすごく好き(伝われ)。

ちなみに、世の中にはネタバレをなんとしてでも回避したい人と、ネタバレを全く気にしない人がいるらしい。わたしは後者である。なんならネタバレを読んでから視聴するかどうか決めるまである。一部の人には理解されないが。

そしてシン・ゴジラは個人的にはなんか物足りなかった。KOMが面白かったことを鑑みると、わたしは「怪獣プロレス」と呼ばれるジャンルが好きであることがわかる。怪獣同士が戦ってるのを人類が巻き込まれつつ眺める、みたいなタイプの映画だ。対してシン・ゴジラは人類VSゴジラだったので、悪くないけどなんか地味だなーと思いながら観ていたタイプの人間である。 ちなみに同じく怪獣プロレスに分類されるパシフィック・リムは大好きである。我々が怪獣映画にもとめていたものはこれだったんだ……。

上記の前提を踏まえて、友人からネトフリでゴジラS.Pが配信されていることを聞いていた。当初は全然観る予定もなかったのだが、友人氏のプレゼンを聞いてたら気になったので観てみた。

……SFだった。 しかも苦手なタイプのSFアニメだった。脚本を観たら有名なSF作家だった。ああ…一話の時点でつらいです。ちなみにアニメでいうとサイコパスとか正解するカドとか苦手です。で、ゴジラS.Pの序盤からそれらに似た空気を感じているのである。つらい。

この記事を執筆している現時点、ネトフリで11話まで配信されている。一応全部観ました。OPはめちゃめちゃかっこいいと思います。

何がつらいって、ハードSFなんですよ。個人的にはハードSF大好きです。小説ならね。しかしアニメでやるとなると話は別。 なんだろう。SFオタクと怪獣好きは別物なんですよ。そこでゴジラという一般受け(?)する題材を元にガチガチのハードSFをやろうとすることに、なんか生理的に受け付けない気持ちのわるさみたいなものを感じるのである。これがうまく言語化できずに未だにもやもやしながら文字を打っている。

航空機に例えるなら前進翼カナードのついた機体みたいな(余計分かりづらいわ)。

ゴジラ大好きな友人は「今までのゴジラ作品になかったタイプ」と喜んでみていたのだが、週を重ねるごとにテンションが下がっているのを観てなんだか申し訳ない気持ちになった。自分が何かしたわけではないのだが。 で、そんななら一回観てみるかと思って視聴した結果がこれである。つらい。

しかも何がつらいかきちんと言語化できない。 いや、なんとなく分かっている。ハードSFは、誰がなんと言おうと一般受けはしないのだ。それは一部のコアなSFマニアのためのものだ。アニメ化しようと映像化しようと、小説という媒体で読むことに最適された文化はそうそう一般ウケしない。 それが、ゴジラという共通言語を得て一般に向けて配信されていて、ハードSFオタクがここぞとばかりに考察に勤しみ、一般人(?)を置いてきぼりにしていることに対してもやもやを感じている気がしている。

個人的には、怪獣映画に求めているのは怪獣プロレスなのである。人類VSゴジラではない。それだけならまだしも時空がどうのとか未来がどうのとかの話になってくるともう共有できなくなってくる。 ちなみに、超次元がなんとかとか時空がどうのとか特異点がなんとかみたいな話は大好物である。

でも、ゴジラにつられた一般人(?)がいきなりそういう領域に連れて行かれて撃沈しているのを見ているとなんだか申し訳ない気持ちになるのだ。なにもしてないのに。

おもしろいとかつまらないとかいうシンプルな問題ではない気がする。SFと一般受けの問題。これはいずれなんとかなるような問題ではなく、単に住んでいる場所、見ているものが違う人種なのでどうしようもないのだと思っている。

勝手に一般受けするSFを書きたいなと思っているのだが、「一般ウケするSF」っていわゆるスターウォーズとかスター・トレックみたいにハードではない。ライトSFなのである。スターウォーズファンにグレッグ・イーガンを読んでもらっても面白いとは思えないだろう(何度も言うが、個人的にはどっちも好きである)。

ああ、身近にそういう例がいるから不安になっているのかもしれない。身近に、ゴジラに釣られてゴジラS.Pを観てしまったゴジラファンがいなければこういう複雑な心境にはならなかったはずだ。

最後に、この文章は誰かに向けたものではなく、単に指の運動のために書いたものであることを明記して、今回は終わりにしたいと思います。それでは、またいつか。