ペン一本と、メモ帳

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スタートアップに転職して失敗し、意識高い人間を演じるのがつかれた

一年前の今頃、自分は転職活動に励んでいた。なぜなら当時在籍していた会社が経営不振でどうにもならない状態だったからである。一刻も早く、そこから脱出する必要があった。

初めての転職を経験した自分は浮かれており、仕事用のSNSアカウントを作ってそこで見知らぬ同業者たちと交流していた。年下でもフリーランスで稼いでいる人、長年エンジニアを経験している職人的な人、イケてるスタートアップでバリバリ働いている人がSNSには大勢いる。そういう人たちと接していると、いつの間にか自分もそうなれる、なりたいのではないかと思いこんでいたのかもしれない。

とにかく、そうやってSNS経由で意識高そうなスタートアップに入った。当時は「N○○退職してG○○gleに転職しました」みたいな記事が流行っていて「日本の大手より海外のスタートアップが優れている」みたいな風潮だったと記憶している。一刻も早く転職したかった自分もなんとなくそれに流されて、大企業よりもスタートアップでエンジニア経験をバリバリ積むんだ!みたいな思想だった気がする。

しかしGoogleのような大手はともかく、小さなスタートアップは本当にリスクの塊だった。まずエンジニアが少ないので社内の風当たりが強い。ちょっとでもスケジュールより遅れると「あの人は仕事できない」みたいに言われる。同僚との相性が良くなかったのもあるかもしれない。それから、業種もあるのかもしれないがとにかく「陽キャ」が多かった。自分のような根が陰キャ陽キャの中に入るのにはかなりエネルギーを使わなくてはならない。社内でもなんとなく陰キャっぷりは露呈していたらしく、もっと喋って欲しいとかコミュニケーションとってほしいとか色々と言われた。まぁそれは、最低限の人数で運営しているスタートアップなら仕方のないことかもしれないが、自分と同じような境遇の人間がいなかったのはちょっときつかったかもしれない。

自分はここ2年ほどモーニングページを書いているのだが、前職に入社してからほぼ毎日「しんどい」と書いてあった。そうやって今になって振り返ってみると、やはりスタートアップは自分には合わなかったのかもしれない。

当時はとにかく意識高い系人間を演じていた。SNSで大量にフォロワーを集めたし、知らない人と積極的に交流し、リアルで会うなどという、それまでの自分からは考えられない行動力を発揮していた。それはすべて「当時の会社から一刻も早く逃げ出したい」というネガティブな感情から生成されたモチベーションだったのだと、今になって思う。が、当時はそれがよりよい環境へ行くための唯一の道だと思っていた。

半年後にそのスタートアップは訳あって辞めることになり、もう意識高い人間を演じることは出来ないと思った。一時期はエンジニアという仕事をやめようかと思っていたし、当時たくさんのフォロワーを集めたアカウントも消そうかと思っていたが、転職エージェントとの面談時に「その経験を活かさないのは勿体ない」と言われ、思いとどまった。

そうしてエージェント経由で色々な求人を見ているうちに、「実はそんなに意識高くなくてもエンジニアとしての仕事はできるのではないか」と思うようになった。別に外資系のスタートアップでなくてもいい。日本の企業で地道にキャリアを積んでいけばいいのだ。SESでの経験のほうが長い自分にとって、もしかしたらそのほうが向いているのかもしれない。

それは転職エージェントにも言われた言葉で、なるほどそうかと思ったものだ。まぁ転職エージェントも大手企業のバリバリイケてるサラリーマンなわけであって、中小ばかりを渡り歩いてきた人間に共感できるとも思えないのだが、だからこそ第三者的意見がありがたかったりするのだ。友人や家族に仕事のことを相談しても、実際のところ具体的なアドバイスはもらえない。そこは、やはり彼らもプロなのだ。

そんなわけで今は転職サイトに求人が載っている、安定していそうな企業を中心に応募している。まだ結果が出ていないし、もしかしたら書類で全滅かもしれない。その場合はまたTwitterで仕事を探すのもありかもしれない。前回の転職活動で人脈は充分にできたし、直接スカウトももらっている。でももうちょっとだけ、大手で自分の専門業務だけに集中したいという夢を捨てきれないでいる。なんなら大手企業の社員というのを一回経験してみたいと思っている。それが正解なのかは分からないが、やってみないことには何もわからないのだ。