ペン一本と、メモ帳

好きなものを好きなだけ

感情は物質に支配される

nil-fell.hatenablog.com

上の記事を書いてから一ヶ月くらいたって、ようやく増量した抗うつ剤の効果が出てきた気がする。頭痛の頻度が減ったし、電車を待っているときの強力な希死念慮抑うつが少し軽くなった。相変わらず不眠症だし、毎日悪夢をみるけれども。

メンタル系の薬を飲んでいて思うのは、人間の意識はどこまでも物質に支配された電気信号でしかないのだなということだ。同じようなことを伊藤計劃氏が言っていた気がする。(10年以上前の記事なので元ソースを探してみたけど見つからなくて諦めた)
彼の場合は精神安定剤だったらしいので、自分の場合とは少し違うけれども、メンタル系の薬という点では似たようなものである。

余談だが、精神安定剤とかいうと無知な人には「ハイになったりするんでしょ?」と言われたことがあるのだが、それはやばいほうのドラッグである。実際の効果はというと「仕事行くの無理……」から「しょうがねぇ出勤するか」程度の変化だったりする。私はデパスが全く効果がなかったのでプラシーボだと思っているけれども。もともと精神的なものより体調の不調のほうが大きかったので、それに対して効果がなかっただけかもしれない。

ダルいとか動きたくないとかめんどくさいとか、そういう思考はセロトニンノルアドレナリンなどの神経伝達物質の増減によって表れたり、消えたりするわけだ。やる気になったり、散歩していて幸福感を感じるのも神経伝達物質の影響なのだ。
お酒を飲んだ後にラーメンが食べたくなるのも、アルコールの分解に糖分を消費した身体が無意識に炭水化物を求めているからにすぎない。ラーメンを食べたくなるのも自分の意思ではなく、糖分が足りないと脳が訴えているだけだ。ちなみに自分はお酒を飲んだ後にラーメンを食べたくなったことはない。…のだが、一般的なわかりやすいたとえとしてラーメンをあげているだけ。
空腹状態になると怒りやすくなるとかいうのもこのパターンらしい。低血糖時には攻撃性が増すと聞いたことがある。元狩猟動物としては空腹は死につながるものなので、空腹時に攻撃的になるのは納得できる。他にも、キレやすい人は何らかの物質が足りていないことが多い。人前で部下を怒鳴り散らすパワハラ上司とかは何らかの神経伝達物質が過剰だったり少なかったりする。たぶん本人に自覚はないし、検査をすることはないだろうから目立たないだけで。全ては脳の問題なので、本人に何か言って聞かせてどうにかなるものではない。そう考えると、やばい行動を取っている人を目にしてもあんまり気にならなくなる。脳が誤作動中なのね、と思ってスルーできる。

怒りの感情も幸福感も抑うつ状態になるのも全て物質の作用だ。意識のほとんどは脳がコントロールしている。その結果、気分が落ち込んだり、不必要なことを言って誰かを怒らせたり、楽しくなったりしているだけだ。空腹でご飯を食べたいと思うのは脳が栄養を欲しているからであって、自分の意思ではない。誰かに会いたいとか、一人になりたいと思うのも、それまでの経験からそうした方が生命維持に有利だからという本能的なものである。おそらく世の大半の人が思っている以上に、我々は自分の意志で決定していることが少ない。ほとんどが脳によって決められたものを、自分の意思であると勘違いしたまま行動しているのだ。

では、人間が本当に自分の意識だけで行動しているのはどの程度なのだろう。正直に言うと、よくわからない。何気なく行動している普段の活動のすべてが、脳内に組み込まれた本能だけで行われている気がする。電車を待つのに列を作るのも、信号機に従って移動するのも自由意志ではないし。こうしてブログを書いていることでさえ、本能的にストレス解消手段の一つとして取っているだけだ。日常の行動のほとんどが遺伝子に組み込まれた自動的な作業であり、我々が自由意志で行っているわけではない。そう考えると、渋谷のスクランブル交差点を信号機と横断歩道に制御されて行き来する大量の人と、フェロモンによって行列を作る蟻に大差がないと思えてくる。むしろスクランブルに移動する人間よりも整列する蟻の方が社会性があるのではないだろうか?

生き物というのは高度で精密な機械だと思う。脳は電気信号で動いているし、意思決定は物質によって行われている。しかしあまりにも複雑で高機能なためにときどき不具合が発生する。自分の体調不良はその不具合の一種で、薬の摂取によって一時的に正常値までセロトニンを増加させることによって活動に不具合が出ない程度に維持している。ということを考えると、人間ってマジでメカニカル。

気になったので(仕事中に)「自由意志」で検索すると哲学的な記事がたくさんでてきた。この辺は神経科学かと思ったけど、哲学の分野なんだな。哲学苦手とか言いつつあとで暇な時に読んでみようと思って、とりあえずブログにメモとして残している。個人ブログで取り上げるにはちょっと荷が重い話題だった。ただのWEBエンジニアなのに。何書いてんだ俺。