ペン一本と、メモ帳

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「これからはSES一本でやっていく」と言っていた前職での話

Twitterを見ていると「SESは滅ぶべし!」と発言している方が多くて頼もしい。
前職を辞める直前は「社内開発で全然売上出ないからこれからはどんどんSESするべき!」みたいな話になってました。TLと全然違う……。

転職していなかったら今のようにTwitterを眺めることもなく、SESの実態もよくわからないまま、ただ漠然とSES企業のなかで「なんか不満だなー」と思いつつ仕事していたのだろう。
というわけで、ネットでいくら「SESは滅びろ!」と言ったところでたぶん中の人たちには届かないと思う。ので書く。知り合いにこの記事が見られることはまずないだろうから。

こちらのツイート、前職がまさにその通りだったので笑ってしまった。

このツイートを元に私が前職のSES企業で経験したことを書いていく。

1. 社内開発で入社

入社直後は社内で受託案件を担当していた。既存システムの改修とか、簡単なものが多かったが、上司のコードがクソだった。
当時の自分は、専門学校でちょっとプログラミングを勉強していた程度のザコだったが、上司のコードはあまりに見づらく、「ソースコードがこんなにわかりにくい訳がない」と思って独学で勉強した。上司を反面教師にして、ある程度のプログラミングスキルが身についた。

客と直接打ち合わせする機会もあり、私の実装した機能が客から感謝されたりと、わりと仕事が楽しい時期だった。

2. 主力部隊がSESで稼いでくる

私は新卒でよくわからないまま、最初に内定が出た企業に入ったのでSESの仕組みを当時はあまり理解していなかった。

普段社内にはいないけどたまに帰ってくる人がいて、私もそのうちそうなるということだけ聞かされていた。たまに見かける、普段社内にいない人は「給料が少なすぎる」「常駐先の方が自社よりマシ」とよく言っていた。その理由は、当時は知らなかった。
今思えばあれが主力部隊の人たちだ。そして当時の私は社内で対して売上にもつながらないが楽しい仕事をしていたのだ。

3.経験豊富な人材はSESに出される

入社して1年ほど経ったころ、はじめて他の会社に常駐することになった。一人で。中途半端な時期に入社したので同期はいなかったし、社内でそこそこ仕事ができたので一人でも大丈夫だと思われたらしい。

最初の常駐先は小さいSIerで、フリーランスの人とかもいて、変な人も居たがいろんな話が聞けたのでわりといい経験になったと思う。

その後数年間はクソな現場とか、それなりにまともな現場を渡り歩くことになる。どこの現場でも大抵「そこそこ仕事ができるやつ」的な扱いだったので単価は上がっていった……らしい。自分の売値を教えてもらえる機会はほとんどなかったので、実際どの程度の金額だったのか知らなかった。前職はそういう、金額的な話を社員にするのを避けている傾向があった。たぶん、売上がよろしくなかったからだろう。

4.SESで稼いだ金で社長の趣味の自社サービスを作る

前の会社ではほとんど役にたつとは思えないサービスを作っていた。
私が主力部隊になったころ、病気が原因で社内に戻っていった社員が社長の趣味の自社サービスの保守を担当していた。かなり古い複雑なシステムで、改修するにも大変手間がかかったらしい。もちろん、改修中はお金が発生しない。その人の分の人件費は赤字である。

私は一人でよくわからない現場に行き、仕事をして病気の社員の分を稼いでくるわけだ。このあたりで「この会社おかしくね?」と思い始める。なぜ改修のたびに赤字になるシステムを作る必要があるのか。そしてその金を、私が客先でストレスを貯めつつ働いた分で補っているのか。

5.ノウハウが無いので持ち帰り案件は赤字

これが判明したころが、自分が転職を決意したときだ。

上司は自分が入社したころからずっと「常駐している人たちにノウハウを持ち帰ってもらって、自社での開発に活用する」と言っていた。しかし、入社5年たっても上司は一向に社外のノウハウを自社で活用しようとしているようには見えなかった。上司は自分が知らないことはできない、やらない人だった。部下の話を聞くつもりは元々なかったようだ。そうして私はようやく、この会社はまともに自社サービスを作ろうという気がないのだ、ということに気がついた。

それから色々あって社内では改革が進み、ある日SES部隊と社内部隊の売上が公開されることになった。受託案件のあまりの赤字っぷりに「もう受託はやめてSESだけにしたほうがいいのではないか」という声が上がり出した。
しかもSES案件をとってくる営業があまりにもITの知識が無かったので「営業を介さずエンジニアが自分で常駐先を選ぶようにする」とか言い出した。それって転職と何が違うの?この会社にいる意味あるの?と思った。

このころの自分はクソみたいな現場でメンタルがやられていたので(今もだけど)、記憶が曖昧だ。詳細は以下の記事に書いてある。

nil-fell.hatenablog.com

SESしか知らない人たち

たぶん、前の職場で一緒に仕事をしていた人たちはSESが悪いなんて1ミリも思っていないと思う。稼ぐ手段をそれしか知らないからだ。SESという形態が当たり前で、それ以外のIT業界は安定しない仕事だと思っていた。それに、他の業界でやっていく程の技術力もない人がほとんどだった。

以前、元上司に聞いたのだが「より良い生活をしたいなら資格をたくさんとり、より上位のSIerにいくしかない」と言っていた。なんて視野が狭い人なんだろうと思っていた。でも、今思えばその人は家庭を持っていたので保守的な考えにならざるを得なかったのかもしれない。

とにかく、私はそんな会社から「IT業界なんてどこに行っても同じだよ」と言われながら退職した。SES以外の業務形態を知らない人たちになぜそんなことがわかるのか不明だが、今になってはその言葉が嘘だったとわかる。上司の話をまともに聞かない、出来の悪い部下で本当によかったと思う。

私はこの世からSESという業務形態を消し去りたいと思っている。私が魔法少女になるときの願い事はたぶんそれだ。そして客の理不尽な要求を消滅させる魔法が使えるようになるはずだ。少女じゃないけど。

ただ現状、SESで満足している人たちが一定数存在する以上、SESがなくなることは難しいと思う。中の人達がそれを悪いとは思っていないからだ。たぶん、世代交代するか法律が変わるまで残り続けるのだろう。願わくは来世はSESが無い世界でありますように。