ペン一本と、メモ帳

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ハイ・ライズの感想(映画&小説)

先日、ふと思い立って「バーナード嬢曰く。」を再読し、作中で紹介されていて気になった「ハイ・ライズ」。Kindle版の小説を買って、読み終えてすぐに映画をレンタルで見ました。思い立った時にすぐ見られるAmazon超便利。

小説版の感想(ネタバレなし)

住民たちが野生に帰って暴れまわるだけの話なので、ネタバレというほどのものはなし。 完結に書くと、すごくおもしろい…というわけではない本でした。全体的に鬱屈とした雰囲気だし、舞台は荒廃したマンションだし。
読んで最初に思ったことは、「どうしてそうなる!?」でした。住民は知的な専門職についている人たちなのに、生活モラルはない。マンションの設備は入居してすぐに故障しまくる。
これは現代の視点から見るからそう思うのであって、もしかしたら、書かれた当時(70年代?)のテクノロジーでは、40階建てのマンションのインフラなんて、電気も水道も信用できないレベルだったのかもしれないと解釈。現代には2千人以上住んでるマンションなんか余裕でありますけどね。
それと、イギリス特有の階級社会がマンション内で作られていて、下層と上層でのいがみ合いが発生するところまでは分かる。しかしそこから生活が崩壊していくのに、住民のほとんどがその状態に適応しようとするところが意味不明だった。なんでそうなるんだ、と。そもそもベランダからゴミを捨てるのはないだろう、と。上流階級の人がなんで生活モラルだけ底辺なんだよ、と。
リアルに階層による階級…というか、暗黙の了解的な格差はありそうですが、仮にあったとしても心理的な嫌がらせにとどまるでしょうね。そもそも警察沙汰になるし。しかし作中ではなぜか住民が一致団結して警察をマンションに近づけないようにしています。 なぜかしだいに荒廃していくマンション。そこの描写はちょっとおもしろかった。

しかし犬がひどい目にあうことが多いので、犬好きの方にはおすすめできない。というかどんな人にもおすすめすることはないであろう本でした。

登場人物が多いので、メインの3人以外どれが誰だかわからなくなるときが度々あった。こういうとき、KindleX-Rayは本当に助かります。すぐに人物名検索できるし。
関係ないけれどもその昔、フィリップ・K・ディックの「ユービック」を読んだのだけれど、あれも登場人物多すぎてKindleじゃなかったら絶対に読了できなかっただろうと思う。基本的に人の名前が覚えられない…。
しかしあとがきを読んで、原書でもワイルダーの妻の名前が途中で変わっていたりしたそうなので、あれだけ人物が出てくると作者も覚えてなかったりするのかもしれない、とちょっと安心したりもしましたw

少々脱線したけれども、巨大なマンションという閉鎖空間での暗黙の了解から始まるディストピア的な舞台設定は面白いと思えたので、グロいものとか汚いものが平気な人なら読んでみるといいかも。

映画版の感想(ネタバレなし)

小説の感想を探していたら映画の感想を見てしまって、ルーク・エヴァンスが出てるから見てみよう、程度のノリでAmazonでレンタル視聴しました。「ホビット」見てから好きなんですよね。ワイルドな見た目もかっこいいけど声が特にいい。映画は評価が微妙なのでレンタルするかかなり迷いました。エヴァンスが出てなかったら多分見ることはなかったでしょう。

小説版と内容はほぼおなじ。ところどころ変わっている部分はあるけども、ほぼ原作どおりと言っていいです。
ただ、映像と音だけで説明がないシーンが所々にあるので、映画のみを一回見ただけだとわかりづらいかも。かっこいい絵を作るのに力入れすぎて説明不足な感じがありました。

60年代、70年代のイギリス車でいっぱいの駐車場、いいです。すぐに荒廃するけども。
主演のトム・ヒドルストンは「ミッドナイト・イン・パリ」で知ったけど、かなりの肉体美でしたね。崩壊したジムで無表情で筋トレしてるあたり、ラングのクレイジーさが顕著に表現されていた感あります。

ネットで感想を漁ったところ同じような感想をちらほら見かけたのですが、この映画を人にすすめることは決してないでしょう。肌色多いし、知性はないし、突っ込みどころ多いし。

映画の内容とは関係ないのですが、自分はなぜか高層マンションが苦手です。20階以上の巨大マンションを見ていると何故か吐き気がしてくる。これ、誰にも理解されたことないんですけど何なんでしょうね。あの建物に大量の人間の生活が詰まっていると想像すると吐き気がしてきます。
自分は、たとえ停電とか水道トラブルがなくても高層マンションには絶対住めないだろうなぁとは改めて思いました。