ペン一本と、メモ帳

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インターネットの匿名性の話

某アニメの関係者がネットで誹謗中傷や個人攻撃をしていた事件について、ちょっと調べていた。なぜ現代においてもこのような「ネットで悪口」レベルのアホが発生するのか、そして(ほぼ)特定までされて問題になるのか。

考えてみたのだが、本人のネットリテラシーが低かったこと、それとは反対に社会的ポジションがそこそこあった、というのが原因だったと思う。社会的ポジションがそこそこだからこそ、自己顕示欲が高く、ネットでもそれが通用すると勘違いしてしまったパターン。逆に言えば、それでもネットリテラシーがしっかりしていれば、あそこまで炎上することはなかったであろうと思われる。

さて、ネットでの匿名性とは言っても、大まかに2種類ある。

1. 完全に匿名

5chとかふたばとかその他掲示板がこれに当たる。基本的にハンドルネームが存在せず、IDは一定時間で変更され、一旦投稿したものは再編集することができない。
完全に匿名と言っても管理人にはわかっているので、ここで誹謗中傷や犯罪予告などの行為をするのは馬鹿以外の何者でもない。仮にもし、何らかの事情で法律に反する行為やIDを切り替えて自演をしたい場合は、普段使っている回線以外から書き込んだり、串を通してIPを偽装するなどの一手間をかける必要が出てくる。必ずしも必要ではないが、IPの特定を避けるためには必要な手段だろう。今回の炎上事件はそれを怠ったためにIPがバレ、炎上の悪化につながった。

2. ハンドルネームのある匿名

TwitterなどのIDが固定されているSNSがこれに当たる。ハンドルネームによって個人の同一性は保たれているものの、そこから個人を特定できるか否かは本人が投稿する内容によるので、特定されたくない場合は投稿内容を慎重に考える必要がある。Twitterを例に上げるが、この手のSNSは投稿を消してもサーバには内容が残っている。基本的にエンジニアというのは削除機能をつけても物理削除させることはまずない。論理削除が一般的である。論理削除というのは、ユーザー側からは削除されたように見えるが、実際のデータベースにはデータが残っている状態のことである。ほとんどのDBがこういう設計になっている。なぜかというと、ユーザーから「さっき間違ってデータ消しちゃったけど元に戻したい」という問い合わせがほぼ確実に発生するからである。まぁ、Twitterの場合は法律的な問題も関わってくるので尚の事投稿内容は詳細に保存しているはずである。
難しい話はともかく、たとえTwitterのアカウントを削除しても、一旦投稿した内容が完全に消えることはまずない。ID固定のSNSで誹謗中傷などの行為をするのは非常にリスクが高いということが分かる。


某アニメの関係者の話に戻そう。
誰とは言わないがこの関係者はTwitterで複アカを作ってライバル関係にあるユーザーの誹謗中傷、ネガキャンを繰り返していた疑惑がある。そして複アカがバレそうになるとアカウントを削除して逃亡を図った。前述したとおり、アカウントを消してもデータベースには残っているので管理者が見ようと思えば見れる状況であり、第三者も開示請求をすれば閲覧することができるのである。

ここからはただの予想だが、複アカ疑惑のある某アニメ関係者はおそらく、Twitterの仕組までは知らなかったのだろう。アカウントを消せば投稿内容は完全に消えると思っていたのだろう。でないとTwitterであんな暴言は吐けないと思う。特定されるリスクが高いし、そもそも規約違反だし、法律的にアウトの可能性だってある。
ちなみにその某アニメ関係者は、10年ほど前に社内の掲示板を管理していて、荒らしと戦っていたことを自慢していたという過去がある。会社の管理している掲示板なら自分が管理者なので削除するのも放置するのも自由だし、削除してしまえば誰にも見えなくなるだろう。それと同じ感覚でTwitterを使っていたのではないだろうかと思っている。が、残念ながらTwitterTwitter社が管理しているのでデータの保存、削除権限はTwitter社にある。ユーザーはあくまで表面上のデータを閲覧できるだけなのだ。そういう、他者の管理しているサーバ上での誹謗中傷がどれだけリスクのある行為なのか、彼は理解していなかったと思われる。いい大人なのに…。

その他にも、業者か本人かはわからないがふたばで工作やニコニコ大百科のコメント欄で自演していたのがバレてきている。多数の掲示板が存在し、ユーザーもそこそこ教育されている現代で、特定の掲示板だけで火消し工作をしたところで無意味なのだ。「消したら増える」はネットの常識である。不都合な内容を削除したところで、第二第三の投稿者が同じ内容を投稿し、インターネット上から完全に証拠を削除することは不可能である。しかし、彼らはまだわかっていないようで、今でも火消し工作員の書き込みが随所に見られる。

1984年というSF小説をご存知だろうか?作中では国に都合の悪い内容をすべて書き換えるための部署が存在し、主人公はその仕事をしている。国が過去にAと言ったものが時期によってBに変更されると、過去の新聞記事などのAの部分をすべてBに置き換えるという仕事がある。この作品が公開されたのは1948年。当時はインターネットはなく、主な情報収集媒体は新聞だったので、このようなアイディアが出てくるのも分かる。仮に過去の記事すべてがBに変更されたら、Aだった頃の記憶を持っている人も「実は最初からBだったかもしれない」と思い込む…というような内容になっている。

しかし、現代は誰でも情報発信ができる時代である。1984年の世界のような「過去の情報を上書きすれば事実が隠せる」という単純なものではない。某アニメ関係者はそれがわかっていないようで、未だにのらりくらりとユーザーの問い合わせを無視して事実を隠蔽しようとしている。いやもう無理だろ…諦めて事実を話せよ…と、第三者的には思うものの、彼らもいろいろとヤバイことをしているだろうから逃げられるところまで逃げるしかないのだろう。

なんていうか、大人ってほんとに馬鹿だな、といい年をした大人である筆者は思うのである。

一番かしこいインターネットの使い方は、特定個人の悪口を書かないこと、嘘を拡散させないことである。知り合いの悪口は飲み会とかでオフレコでやってください。インターネット上に書き込むのはそれ相応のリスクが伴うことを忘れてはいけない。

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

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